トップ > Altitude Chamber で hypoxia(低酸素症)を体験
2005年03月17日、hypoxia(低酸素症)を体験するため、オクラホマ州にある The FAA Civil Aerospace Medical Institute(CAMI)で提供されているトレーニングに参加してきました。
Altitude Chamberという密封された小さな部屋(一般家庭の台所より1回り大きい程度)に、15人程度が壁を背にして並んで椅子に座ります。
部屋を密閉後、天井や壁から大きな掃除機のようなバキュームポンプで空気を徐々に薄くすることで、気圧の低い状態、すなわち空高い環境を体験することができます。
話を始める前に、2つほど注意点を…。
以上の2点に注意してください。
Altitude Chamberの体験は、1日がかりで行われます。
午前中は教室で、人体と酸素の関係などの抗議を受けます。過去に行われたAltitude Chamber内での様子を録画したビデオも観ました。
午後は実際にAltitude Chamberでの体験実習をします。
Altitude Chamberの中にインストラクターが2人、外にも2人いて、我々とAltitude Chamberのシステムを監視してくれています。
Altitude Chamberの中にいる人全員と、外にいるインストラクターとは、備え付けの小型マイクで会話ができるようになっています。
まず始めに、一人ひとりに用意されている酸素マスク(実際に旅客機のパイロットが使うことになる酸素マスクと同じもの)の使い方の説明を受けます。
そして次に、部屋を密閉し、まずは高度6,000フィート(=約1,800メートル)まで2分かけて上昇します。そして、Altitude Chamber内の全員が体(特に耳)の調子が悪くなっていないことを確認し、海抜0フィートまで下降します。上昇する時に耳の不調を訴える人は少ないのですが、下降するときには多くなります。耳の構造で説明が付くのですが、ここでは省きます。
下降中、耳が痛くなったら、部屋の外で空気を管理している人に向かって、「耳が痛い!下降を止めて!」の合図をします。この合図は、世界で共通の動作が決められています。アゴの下で腕を前後に動かしてください。
…そう、志村ケンの「アイーン」のように…
冗談じゃありません、事実です。(_´Д`)アイ−ン(_TдT)アイ−ン(_ ̄Д ̄)アイ−ン
そして、Altitude Chamber内に一緒にいるインストラクターがやってきて、治してくれます。
治し方は、
さて、話を戻して、海抜0フィートまで下降したら、20分ほど酸素マスクをつけたまま待ちます。体全体の血液に100%の酸素を与えるという目的です。
20分したら、いよいよ高度25,000フィート(=約7600メートル)まで上昇します。まずは高度8,000フィートまで、毎分3,000フィートの割合で上昇します。8,000フィートに達したら、18,000フィートまでほんの数秒で上昇し、その後再び3,000フィート/分の割合で25,000フィートまで上昇します。
この、8,000フィート⇒18,000フィートへの上昇が凄まじいです。
まず空気の抜ける音が怖い。。。
次に、急な気圧低下でAltitude Chamber内に霧が発生します。空気に含まれていた水蒸気が、気圧低下によって水蒸気でいられなくなったために発生する現象です。この現象を理解してないと、煙と勘違いしてしまうそうです。
そして極めつけは、内臓が口から飛び出してきそうな感じが…(´д`)ウヘェ…。飛び出してきませんからご安心を。
25,000フィートまで達したら、いよいよ体験実習本番です。片方の列の人が一斉にマスクを外し、もう片方の人が観察します。(体験が終わり次第、交代します。)
さて、どんなマスクを外した人たちは、どのような影響が出るのでしょうか?そして、それはなぜ出るのでしょうか?
空気は、窒素78%、酸素21%、その他の気体1%で構成されています(中学の理科でやりましたね)。この構成は、260,000フィート(=約79,000メートル)上空までは一定なのです。ただし、あくまで「割合」が一定なだけです。みなさんもご存知の通り、上空に行けば行くほど空気が薄くなっていきます。すると、やはり上空に行けば行くほど、酸素の量も減っていくわけです(ただし、空気全体に対する酸素の割合は同じです)。
人間は酸素無しには生きていけないのは当然です。ということは、酸素濃度が薄くなれば薄くなるほど人体に“何らかの”影響が出ることは予想がつくと思います。“いい影響”にせよ“悪い影響”にせよ。。。(いい影響に関しては、もっと後の方で説明します)
【授業中に習ったこと】
【実際に私が、Altitude Chamber内で経験したこと】
【実際に私が、Altitude Chamber内 で他人を観察した際に見たこと】
【授業中に習ったこと】
【実際に私が、Altitude Chamber内で経験したこと】
【実際に私が、Altitude Chamber内で他人を観察した際に見たこと】
3つめは、その他の感覚に関してです。
【授業中に習ったこと】
【実際に私が、Altitude Chamber内で経験したこと】
4つめは、お待たせしました、後述するといった「いい影響」についてです。
私はまだ酔っ払ったことはありませんが、酔っ払った経験のある方は、とぉ〜ってもいい気分になった事があるかと思います。どうやら低酸素状態に陥ると、同様の現象が起こるそうです。本当に“いい影響”なのかどうかは分かりません。。。
(((\(@v@)/)))ホホーイ 白\(Θ_+ )ミヤゲー
さて、高度25,000フィート上空で体験実習を終えたら、次は18,000フィートまで下がって「夜の視界」の体験です。
下がる途中で耳が痛くなったら、アイーン
酸素不足の環境では、何よりもまず初めに「目」に影響が出るそうです。ですので、やや高度を下げた18,000フィートでも、脳には大きな影響を与えずに目の影響を観察することができます。
人間は、暗いところでも物を見ることができます。星空観察などで暗いところにしばらくいると、だんだんと周りが見えてくるというのは、誰もが一度は経験していると思います。しかし、暗いところでは色の判別がつきません。
これは、明るいところで使う目の細胞と、暗いところで使う目の細胞が異なるためです。明るいところで使う細胞は、色の判別をすることができますが、実は光に鈍感なのです。逆に暗いところで使う細胞は、色の判別をすることができませんが、光にとても敏感です。
普段は、暗いところで使う細胞はあまり活動していませんが、暗い場所では活動を始めます。しかし、この細胞は活動を始めるまでに時間がかかるため、“目が慣れる”までに時間がかかるわけです。
さて、この18,000フィートで暗いところで使う細胞の影響を観察します。
「暗いところで使う細胞は色の判別をすることができない」と書きましたが、「色が周りと違う」ということは判別できます。暗いところで何かの絵を見たときに、色は分からないけど何が書いてあるかは分かると思います。しかし、酸素が不足していると、この「色が周りと違う」ことすら判別ができなくなります。虹の七色、赤橙黄緑青藍紫の隣同士の色、特に青と緑の判別が全くつきませんでした。
さて、これで体験実習は終わりです。海抜0フィートまで下降します。
下降中に耳が痛くなったら、さぁみんなで一緒にアイーン!もういいって。。。
約60分に渡る体験実習でした。
カンザス州立大学では、このAltitude Chamberのコースが、200番台コースで用意されています。とは言っても授業は全く無く、1日オクラホマに行くだけで1単位ゲットです。行くだけ…と言っても、その後にレポートの提出は必要です。 このコース、実は「必須ではない」んです。一応、Human Factors(主に航空心理学)という400番台のコースを取ると「RECOMMENDED(推奨)」として半強制的に取らされますが、それでも必須ではなく、年に数人程度は取らないそうです。 ハッキリ言って、取らないのはもったいないです。実際に経験してみて分かったのですが、やはり授業で習ったこと全てを経験したわけではありません。つまり、授業で習うのは、あくまで「人類が経験するであろう可能性論」であって、低酸素による影響は人それぞれだというわけです。「授業ではこう習ったが、自分自身はどういった影響を受けるのか」というのを予め知っておくのは大切なことだと思います。 ちなみに費用ですが、他の授業と同じく、1単位分の授業料が必要なだけで、旅費・宿泊費等は一切不要(夕飯2回分は自費)なので、わりとオトクな授業とも言えます(?)
さて、話を戻して、この実習が何に役立つのかというと、航空機の与圧機能が働かなくなったときに、人体にどのような影響が出るかを予め体験することができるのです。
一般に、旅客機は高度50,000フィート(=約15,000メートル)上空まで上昇することができます。しかし、完全に機内を密閉することのできないため、旅客機は与圧装置を用いて、機内を約8,000フィート(=約2,400メートル)上空の気圧と同じ気圧に保ちます。
翼や胴体後部のエンジンを使って、圧力の掛けられた空気が機内に送り込まれていると考えてください。排気ガスが送り込まれてくるわけではないのでご安心を…。(〃´o`)=3 フゥ
この与圧機能が働かなくなり、機内の空気が外に漏れて気圧が下がり、酸素濃度も下がり…という状態を経験しておくことは、パイロットにとって大変重要なことです。
与圧機能の搭載されていない航空機ももちろん存在します。基本的に、小型機のほとんどは掲載されていません。カンザス州立大学の所有している飛行機のうち、与圧機能が搭載されている飛行機は、King AirとCJ1+だけです。
FAA(Federal Aviation Administration:航空連邦局)は、そのような、与圧機能の搭載されていない航空機に対して、ある規則を設けています。
この規則は、与圧機能が搭載されていない飛行機にのみ適用されるので、通常は与圧機能が搭載されている旅客機は、高度15,000フィート以上を飛行しても、乗客は酸素マスクを装着する必要はありません。
さて、ここでみなさんを少し怖がらせましょう。飛行機に乗るのが怖い人は、これ以上は読まないで下さい。余計に乗りたくなくなりますよ。
飛行機に乗ると、離陸前に「機内に酸素が必要になった場合は、自動的に酸素マスクが下りてきます」という説明と共に、どこかのお姉さんが笑顔で落ち着いて酸素マスクをゆっくりと装着し、隣に座っている小さな子供にもマスクを付けてあげるという映像が機内に流れます。
大嘘です!てか、無理です!
もし飛行中、しかも高度45,000フィート(=約14,000メートル)上空であれば、熟練したパイロットでも乗客用のマスクを装着する前に失神します。
パイロット用の酸素マスクと乗客用の酸素マスクは、全く別のものです。パイロットが緊急時に両手を使って酸素マスクを装着してては、飛行機のコントロールができず、余計に危険です。その為、パイロットが使用する酸素マスクは、片手で、しかもほんの2〜3秒で装着できるようになっています。FAAの発表によると、高度45,000フィート上空で人間が失神するまでの時間は9〜15秒です。もし高度45,000フィート上空で与圧機能の異常があった場合、乗客は9〜15秒で酸素マスクをつけなくてはいけません。この9〜15秒は意外に短いです。急に「ドカン」と大きな爆発音がしたかと思うと、頭の上から黄色い酸素マスクが下りてきて、何が起こったかよく分からず回りを見渡してみると、みんな失神してます。。。そして自分も失神。。。
今回見たビデオの中で、Altitude Chamberが45,000フィートに達してすぐに乗客用酸素マスクを装着し始めた熟練パイロットでも、結局装着できずに失神寸前⇒Altitude Chamber内で酸素マスクを付けた別の人が代わりに装着⇒体がピクピク動きながら、徐々に意識を取り戻す。。。といった具合です。熟練パイロットですらこれですから。。。
日本の国内線なら多分そんなに高くは飛ばないと思いますが、国際線なら45,000フィートくらいヨユーで飛びます。
ちょ、ちょっと、そんなに怖がらなくてもいいですよ。緊急時にはきちんと高度を下げてくれますから。失神しても、酸素が戻れば意識も戻りますから。緊急降下中に耳が痛くなったからってアイーン…してはダメですよ。。。
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